とよだの腹
イヴの思い出
街を歩くと クリスマス一色である
まぁ 今年は景気が戻りつつあるので 街の活気も例年になく盛り上がっておるしなぁ
オイラ キリスト教信者ではないが ワクワクさせてもらえるものなら「祭り」のネタは何でも良い 
参加せざるをえんだろう ケンタッキーでチキンを買って喰らってやったぞ



長く生きているとね
それなりに クリスマスにも いろいろな思い出がある
ガキの頃の思い出や 思春期の頃の思い出 ・・・そこまではいいとして 成人してからはねぇ
基本的にモテないんでね 大半の思い出は 山下達郎のクリスマスイブ的なもの
(きっとキミは来なぁいぃ~)であるが・・・


今年ね  街を歩きながら ふっと20年以上も前の事を思い出した
それは とっても不思議な「イヴの思い出」であった





  ガキども(♂)は 基本的にNO.1を決めるのが好きである
  修学旅行の夜の定番「おい オマエ 誰が好きなんだ?」に始まり 人気投票やったり ミス〇〇決めたり
  極論すればどんな学校・会社・組織にも 人気NO.1女子 という方が存在する


最初の赴任地は仙台であった 2年目から6年目まで青森で零細企業のような営業所勤務(人員3~5名)
7年目突然東京支社異動を命じられた 東京には支社と営業本部 1,000人以上の大企業の規模である
同期も大勢待っていてくれた 毎晩のように酒盛りをしてくれた そして呑みながら
「おい 東京のNO.1って誰だ」 当然のようにオイラ 同期の連中に問うた
同期会に結集した10数人の全員が口を揃えた
「そりゃ ショールームのMちゃんだ」
なるほど東京のNO.1 はMちゃんと言う女性なのか
明日見に行く 誰か紹介してくれ 酔っ払いとよだはニコニコしながら皆にそう言ったそうである

  東京の旗艦ビルは都心の一等地にある
  1F~3Fまでショールーム(以後SRと略す)で 4F以上が事務フロアになっていた
  受付も1Fにある SRの女性が受付も兼ねていた まさしく「会社の顔」である

翌日 同期を先導にSRに降りて行ったオイラは 教えてもらう前に 美女揃いのSRでとりわけ眩いオーラを
放っている一人の女性を見つけた
「ほぅ」
果たして それがMちゃんであった

今から思えば よくそんな行動を取ったなぁ と思うのだが 何を考えたのか若僧とよだは
つかつかとMちゃんの前に行き「アンタか? アンタがMさんか?」と話しかけた
突然の出来事に えっ という顔になったがMちゃんはすぐ次の瞬間ニッコリと微笑みを返し
「はい 私がMと申します」
と答えてきた 
これか この笑顔にみんなやられてしまいやがったんだな
「突然ごめんね 今度転勤してきた市場開発のとよだと申します 
 昨日みんなに『NO.1は誰だ』って聞いたら アンタだって言うから 挨拶に来たんよ」
「そうですか 今後ともよろしくお願い致します でもSRには私なんかよりずっと素敵な子たちが沢山いますから
 とよださんのお仕事のお役にたてると思いますよ どんどん使ってくださいね」
さすが「会社の顔」である 受け答えにそつがない

オイラの仕事はBtoB というかエンドユーザーよりも企業相手(得意先)が主体である
得意先に商品を紹介する時 SRに招待し 指名でMちゃんに協力を求めることが多くなった
歩きながら 得意先の偉いさんが小声で聞いてくる
「とよださん すごい美人だね びっくりした それに感じがすごく良い」
Mちゃんは 美貌のみならず ホスピタリティーの塊のような子だった
何社かの偉いさんに オイラ胸を張り 笑顔で何度か こう答えたのを覚えている

    「ハイ これが ウチの NO.1 です!」



旗艦ビルには 社員が300人ほどいたろうか
週休2日でね ただSRは土日も昼過ぎまで開けていた
土日はSRの女性陣もローテーションで何人か出していたし 若手男子社員も交代で手伝うことになっていた
防犯上の意味合いもあったように思える 女性だけで開けているのも危ないしな

ある年のクリスマスイヴの前の日 後輩から相談を受けた
「とよださん 実は明日 自分SR当番なんですけど あのぉ・・・」
「ん?」
「あのですね 実は彼女ができまして 彼女が明日デートしたいって言ってきまして・・・」
なるほど よく分かった 若き優秀な後輩よ キミの恋路を応援してやろうじゃないか
「おぅ 代わって欲しいってかい 分かった分かった 頑張って彼女口説いてこい」

定時を過ぎていたが オイラSRに降りて行った 明日の当番変更を告げておくためだ
そこには残業しているMちゃんがいた
「遅くまで頑張ってるね お疲れさま」
オイラの声にMちゃんは顔を上げ いつもの微笑みで迎えてくれた 明日のことを告げた
「明日 SR側の当番は誰なの?」という問いかけにMちゃんは
「ハイ 私が出ます よろしくお付き合いくださいね」

なんでイヴの日にNO.1が仕事してるんだろう 
ちょいと意外だったからかもしれない
その時 オイラ 自分でも予想外の言葉を口にしてしまっていた

「じゃぁ 明日 SR閉めたら 夕方くらいまでクリスマスデートしようや お茶でもご馳走するよ」

それは まさしく分不相応な誘いであった
例えるなら そこらへんのオヤジが上戸彩に声をかけるような
秋葉原のオタクが前田敦子や大島優子に声をかけるような
女性なら そこいらのネェちゃんが嵐のメンバーに声をかけるような 
そんなものである

Mちゃんはいつも通りの微笑みでこう返してくれた
「ハイ ありがとうございます 是非ご一緒させてくださいね」

・・・このオンナ すごいな



翌日 SR閉館後 赤坂のホテルのティーラウンジに彼女を連れて行った
バブル真っ盛りのころのクリスマスイヴの赤坂である 街にはカップルがあふれていた

オイラ少し得意顔であったように思う 
Mちゃんが通り過ぎると男性陣はほとんど全員振り返る
そんな美女をエスコートしているのは この自分なのである


紅茶とケーキのセットか何かを注文したように思う
いろんな会話をしながら オイラ ずっと聞きたかったことを聞いてみた
「ねぇ どうしてMちゃんは そうしていつもニコニコ笑顔なの?」




  いつもながらの タラタラとした 長々とした文章 申し訳ない
  読者の諸君 そろそろお疲れであろう が、もう少しつきあって欲しい
  実はここまでが前段なのである





今日の本論はここからである
何故 不思議な「イヴの思い出」なのか  
それは「なぜ笑顔なのか」の問いに対する Mちゃんの答えであった 
・・・オイラの思考回路はぐちゃぐちゃになった


「私は小さいときからブスなので 母親が心配して言ってくれた言葉があるんです」
  
  『オマエは不細工だから とにかく他人様の前ではニコニコしてなさいね
   そうすれば皆さんに不快感を抱かれず 皆さんはオマエを嫌わずにいてくださるからね』



ブス・不細工・・・ この美人は一体何を言っているんだろうか
ただ それは謙遜でも 腹黒い計算づくの自己卑下でもなく とっても素直な口調であった
思わず まじまじと彼女の顔を見つめてしまっていた
こんな至近距離で彼女を見るのは初めてだった

目・鼻・口・耳・・・ 確かにひとつひとつのパーツは美人のそれではない
輪郭・配置・・・均整がとれているわけでもない
オイラの頭の中で 一つの結論が駆け巡った

   ・・・この子は ブスなんだ

混乱した
10人いたら10人が「綺麗だ」と評する美人なのである
ファンも圧倒的に多く 初対面の人にも目を引く美人なのである
なのに目の前にいるこの女性は自分のことを「ブス」だと信じている
そして その顔立ちは本当にまぎれもない「ブス」なのである

茫然としているオイラの前頭葉で裏とよだがつぶやく声が聞こえた

  「この子は・・・  世界一美しいブスだ」

その論理のかけらもない 矛盾に満ち満ちた結論に オイラただ頷くしかなかった



呆気にとられているオイラを どうかしたのかな という目で小首をかしげていたMちゃんは
おもむろにティーカップの紅茶を口に運び 話を続けた

「ごめんなさい まだ お答えの途中でしたね」
そう オイラの問いは どうしていつも笑顔なのか だったのだ
「私も みんなから嫌われるのが悲しくって怖かったので 一生懸命笑顔でいようって思ったんです」
Mちゃんの口調はゆっくりと でも思っていることをできるだけ正確に伝えたいという
誠実さにあふれた言葉選びをしているようにも思えた
「でも 私にも悲しいことや辛いことや 笑顔になれない時もたくさんあったんです」
この人はオイラに何を伝えようとしているんだろう

「でもね ある時 わたし 気付いたことがあったんです」
それまで凛とした大人の女性の美しい笑顔を絶やさなかった彼女が 次の言葉を発した時
一瞬 子供のような幼女のような 無邪気な笑顔に変わったのを今も覚えている

「とよださん 知ってます? 女の子って 好きなヒトの前だと自然と笑顔になれる生き物なんですよ」


彼女は自分と接してくれる人たちを好きになりたいと思ったそうである
そして彼女が笑顔でいると その人たちも笑顔を返してくれることを体感したそうである
「こんな自分に微笑みかけてくれる」それだけで彼女は有難くって嬉しくって ますますその人たちを
好きになっていったそうである

・・・笑顔の連鎖・・・


オイラの持論である「人類の最強兵器=笑顔」「笑顔の破壊力」そして「最強の女子力はホスピタリティー能力」
などは それまでも薄々感じてはいたが はっきりと確信に変わったのは 
彼女のこの時の笑顔からだったように思う



完全にノックダウンされているオイラにMちゃんは言葉を続けた
「とよださん もうひとつ お話 聞いていただいてもいいですか」
もう なんでも言ってくれの状態である
「ん? なんだい?」
「まだ課長にも報告していないんで みんなには黙ってて欲しいんですが・・・
 私 結婚することにしたんです」
ぐちゃぐちゃの脳みそは もうパニック状態である 脳裏には彼女のファンを公言するイケメンや
エリートたちの顔がぐるぐると回った
「ん? 誰? 知ってる人?」
「故郷のおさな馴染なんです 彼 こんな私でもいいって言ってくれたんで・・・」
こんな私っちゃぁ どんな私なんだ それより東京のイケメンたちはいったい何してるんだ
なぜ こんな美女にアタックしなかったんだ ま ヒトのことは言えんが・・・
「どんなひと?」
「アメンボみたいな・・・ とっても優しい人です」
オイラこの時 アメンボが優しいって人生で初めて知った

小さいときから 自分がブスだと自覚して みんなから嫌われないように みんなを好きになって 
一生懸命生きてきた少女を おそらくは そのアメンボは優しくずっと見守ってきたんだろうなぁ
「よかったね おめでとう」
それ以上の言葉は浮かばなかった




ティーラウンジの窓は夕闇と輝き出したイルミネーションとに包まれだしていた

彼女は やおらバックの中から赤いリボンのついた小箱を取り出して渡してくれた
「今日はありがとうございました これ クリスマスプレゼントです」
えっ? 迂闊にもオイラ こんな展開を予想していなくってプレゼントなど準備していなかった
「ゴメン なんにも準備してなかった」
彼女は首を振りながら言った
「こんな素敵な時間をくださったじゃないですか こんないっぱいお話をしてくれて・・・
 最高のクリスマスプレゼントでしたよ」
そして続けた
「昨日 誘っていただいた時 ドキドキしちゃって・・・ 東京に来て男の人から誘っていただくなんて
 初めてだったんで 昨日の夜は 嬉しくって嬉しくって」
フィアンセがいる女性が何を言ってるのか
「とよださん 東京で いっつも ずっと 一番私に微笑みかけてくださったの とよださんだったんですよ
 本当に ありがとうございました」

完敗であった



その夜 フィアンセがいようと誘うべきだったのかもしれない
東京のクリスマスの思い出に美味しいディナーでもご馳走すべきだったのかもしれない
でも
「家に帰ったら お正月に故郷に帰った時に彼にあげたくって 今一生懸命セーターを編んでるんです」
と、すこし頬を赤らめて恥ずかしそうに少女の笑みを浮かべた彼女に その言葉は告げれなかった



赤坂見附の駅で 改札を通った後も 
オイラの姿が見えなくなるまでニコニコと手を振り続けてくれたMちゃんの姿を 
今年のクリスマスの雑踏の中でふっと思い出していた


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