とよだの腹
「天人 深代淳郎と新聞の時代」
テレビ東京に「池上彰の経済教室」という番組がある
東工大の学生に 池上彰が経済学の授業をする様子を毎週30分伝えてくれる
さすがに池上さんなのでな なかなか面白い

ロケに行く途中 ロケ車の中で テレ東の女子アナが 
池上彰にいろいろな質問をするコーナーがあってな
詳細は覚えていないが 確か
「池上さんは いろいろな本を書かれていますが 文章の参考にされている方はいますか?」
だったか
「池上さんが 今 文章が上手いと思われる方は誰ですか?」
だったか
そのような質問をしていた 

  「ほぅ」 である 
  オイラが認める「日本語の使い手」である池上さんが何と答えるのであろう
  この方の文章は 実に分かり易い 
  おそらくは「100」の知識を持って (聞き手に合わせて) 「1」 を語っていらしゃる
  だから この方の「1」の裏には 「100」の世界が広がっている
  現在の日本において 間違いなく 第一人者のジャーナリストである
  彼は誰の名をあげるのであろうか

池上氏は 何の躊躇もなく 「編集手帳の竹内政明さんですね」 と答えていた


新聞社は毎日 自社の主張を「社説」として 掲載している

  最近はみんな新聞なんぞあまり読みはせんだろうがな 
  知らんだろうが発行部数だけでみると 読売が世界一なのである(約1,000万部)
  ちなみに2位が朝日 4位が毎日だ
  識字率が高いのか テレビ欄が見たいのか 近所のスーパーのチラシが欲しいのか
  よう分からんが 民意を扇動するには十分な大メディアである 
  (ニューヨークタイムズなんざ100万部もいっとらん)

社説こそは (かなり堕落してきてはいるが)その新聞社の哲学の公式見解なのである
論説委員が 会議をして決めている
ところが これが 実に面白くない 固っ苦しくてな 
あいつらの偏見を難解な文章で正当化してるだけである

でもな 面白いことに 新聞社には もうひとつの「顔」がある
それが 「朝刊コラム」 ってヤツだ
ここには各社の選りすぐりの名文家たちが 「自分の思い」だけで文章を綴っている

天声人語(朝日)、編集手帳(読売)、余禄(毎日)、産経抄(産経)、春秋(日経)である

これは なかなか面白い
社説がクソ面白くもない「建前」だけの文章なら 朝刊コラムは「本音」っぽくってな

皆さんも機会があれば ぜひ一度 この5大紙なるものの朝刊コラムを読み比べて欲しいがな
(いやネットカフェや コメダ珈琲あたりに行けば 5紙揃えてあるから難儀ではないぞ)
さすがに 各社のエースが書いているだけあって読みごたえがある

ただ (個人的な見解と前置きした上で) 各社が自慢の「書き手」を揃えている そのコラムで
明らかに 頭一つ抜けている というか 圧倒的な文章力の違いを見せつけているのは 
(2014年11月時点で) どう見ても 編集手帳 なのである

あの池上さんと 同じことを考えていたなんて まぐれでも嬉しいが
その編集手帳を書いているのが 竹内政明氏なのである



以前 当ブログで 現在の大メディアを批判しまくった回がある (2014/09/12 付 「朝日新聞」)
その冒頭部だけ ここに引用する

  朝日新聞は かつて 日本の知性・教養の代名詞であった

  その中でも 青春期に触れた 深代惇郎氏の天声人語 の文章力は圧巻であった
  あれだけの制約された字数・段落数で展開される 文章の世界 に 
  ひたすらに「凄い」と ひれ伏した記憶がある 
  敵わない と思いながらも いつしかこんな文章の書ける大人になりたいと思ったことを
  記憶している

  その後 深代惇郎の天声人語 に やっと一人の男が肉薄する
  読売新聞 編集手帳の竹内政明氏である

  新聞朝刊コラムの双璧である 両著とも書籍化されている
  皆さんも時間があれば読んでみて欲しい
  文章を砥ぐ とは この方々の文章のことを言う






長い長い長い 前書き 申し訳ない
実は 池上彰氏 そして 竹内政明氏の話をさせていただいたのは 
この本の紹介をしたかったからである

天人

「天人 深代惇郎と新聞の時代」 後藤正治著 講談社刊


深代惇郎と竹内政明は朝刊コラムの双璧である と書いておきながら
竹内氏が深代氏の筆力に 「肉薄する」と表現している

  なんで このとき そう表現したんだろう

「肉薄」
分かってもらえようか 肉薄とは 「競争などで、すぐ近くまで追い迫ること」という意味である
つまり まだ 追いついてはいない 肩を並べてはいない

そして おそらく 稀代の名文家 竹内政明をもってしても 深代惇郎を凌駕することはもとより
追いつくことすら・・・    永遠にできない


  深代氏が もう故人だから とか そんな理由ではない
  なんでだろ  なんでか わからんが 裏とよだが そう 直感したんだろうなぁ



そして この本を読み終わって 何故 そう思ったか はっきりと理由が分かったのである



いや みんなに「読んでみろ」と言った手前 久しぶりに「深代惇郎の天声人語」を
読んでみようと思ってね
Amazon とか 楽天ブック とか探したんだけどね
もう40年も前のコラムなんでね 絶版になっておったようだ

あらら・・・ と思っておったら 10月10日にこの本が発行されていた
よしよしである さっそく電子版を購入してダウンロードして読みふけっておったのだ

  当著は 深代氏と関係のあった方々を 丁寧に丁寧に取材して 
  深代氏がどうのような人物であったのか描き出してある
  途中に 氏の書かれた「天声人語」が何篇か引用されている 懐かしい

  一篇は800字である すぐ読める
  ただ 読み終わって すぐには次に進めない 余韻がすごすぎるのである

  後藤氏(著者)は 深代惇郎を
  「天がきまぐれに このような書き手を地上によこして そして さっと召し上げた」
  「そういう意味で言えば 深代淳郎は天がこの世に遣わせた人<天人>であったのかもしれない」
  と 結んでいる

  深代氏が天声人語を執筆したのは たった2年半である
  そして 最上の文章を綴っていた そのさなかに46歳の若さで急逝されている


先程の「何故」の答え合わせをする

この本の途中に このようなくだりがあある

  深代はもう名文を書こうとしなくなっていたのではないか
  それよりも物事の核心と思われることに率直に平明に迫ればいい
  自然に自身の内から湧き出てくるものを綴ればいい
  - そんな境地に達しつつあったのではないか
    それが結果として名文と呼ばれるものになっていった




白鵬が まだ超えていない最後の記録が 双葉山の69連勝である
双葉山が70連勝ならず 連勝が止まった時 言ったとされる名言がある

      「我 未だ 木鶏たりえず」

現在の日本の最高の言葉の遣い手 池上彰
現在の日本の最高の名文家     竹内政明

彼らは双葉山であるのかもしれない
努力をし研鑽をつみ 最上の文章を我々に紡ぎだしてくださる

そして 彼らが双葉山なら 深代惇郎は その時すでに 「木鶏」 たりえて  そして   
2年半の宝物だけを残し  逝ってしまったのではないか
 

    繰り返す 池上氏も竹内氏も 今の日本を代表する 言葉と文章の達人である
    そして もっと素晴らしい文章を書きたいと おそらくは必死の努力を重ねられている 
  
    ただ そんなお二人に対して
    「もう 名文を書こうとしていない」 深代氏の文章は その時 すでに

    もはや (誰も追いつけない) 違うステージに在ったとしか思えない




このブログを読んでくださっておられる方々
キミたちに この本はお勧めできない 
若いだろうからなぁ
深代惇郎の「天声人語」にリアルタイムに接していなければ ちょっとなぁ 
オイラが何言ってるか おそらく実感できないと思う


   朝日新聞社に告げる

   外部委員に総括させるとか 社長を代えるとか そんなことでは 朝日は復活しない
   「深代惇郎の天声人語」を復刊しなさい
   そして社員全員で再読しなさい 
   彼の文章をかみしめて それぞれが腹に落としてみなさい
   それだけが キミたちが生き残れる最後の手段だと思います


キミたちの先輩に これほどの教養と品格と愛情を持った方がおられたことを
そして その人格を育み その才能を開花させたのが 朝日新聞であったことを
キミたちはそれほどのメディアであったはずだ



この方の文章は もはや名文と言う評価軸では語れない 

    天 声   である

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